【はじめに】
仏教における実践的な根本教理にあたるのが「四諦八正道」である。
釈尊が初めて行った説法がこの「四諦八正道」であるとされていて、その事を「初転法倫」という。
「諦」というのは真理という意味で捉える。
大まかな意味合いとしては四つの真理と八つの正しい道という意味で、その対象となるのは僧侶に限らず全ての人にあっていいものとなっている。
【四諦】
- 苦諦・・・苦の現実。人が自分の願ったようにしてくれない、この世が思い通りにならない、といったような執着や妄執からくる憂い。四苦八苦といったような生きていくうえで、望む望まないに関わらず避けては通れない苦しみ。さらには五濁悪世や六道といった時代や環境がもたらす苦しみなど、生きていくという事は必ず苦しみが含まれる。
- 集諦(じったい)・・・苦を引き起こす原因。執著、妄執、欲望の因果から生じるもの。具体的には十二因縁によって引き起こされるもの。苦には因果がある。
- 滅諦・・・苦を滅した世界。涅槃。知恵や慈悲をもって安穏の世界に到達する。不苦不楽の中道。この滅諦においては各宗派によって違いが出てくるが、仏法によって得られるものと考えていい。苦が生じなくなった悟りの境地。
- 道諦・・・滅諦に至るための実践的な行動規範。八つの正しい道。
【八正道】
- 正見・・・正しい見解。縁起を通して物事の因果を見て、本質を見極める。偏見などの歪んだ物事の見方をしない。
- 正思惟・・・正しい思考。怒り、妬み、嫉妬、執着に囚われた考えを離れる。全ては縁起より成り、相互依存によって存在していて実体はない。
- 正業・・・正しい行い。むやみに生き物を傷つけたり殺したり、人の物を盗んだりしない。
- 正語・・・正しい言葉遣い。嘘をついたり人を傷付ける言葉を言ったりしない。口は禍の元。
- 正精進・・・正しい努力。むやみやたらにやるのではなく、明確に何が必要かを考え意味ある努力をする。
- 正念・・・正しい観念。仏法を常に心に思いとどめる。一切は空である。
- 正命・・・正しい生活。不摂生な生活をしない。
- 正定・・・正しい瞑想。心を静めて穏やかに精神統一する。
【さいごに】
この実践方法はシンプルで今日からでもできて、尚且つ、いくらでも掘り下げていく事もできるし、苦行だとかの要素もない。
釈尊は長い苦行を経て、皮と骨だけになるほど自分を追い込んで、極端な苦行が意味のない事を悟り、この実践方法を編み出した。
この「四諦八正道」にあらゆる仏教教義をあてはめていく事が日常的な仏教の基盤になると思う。
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